「師匠って本当に海が似合いませんね」
春色トレイン
列車はガタゴト音を立てて穏やかな日差しの中を進む.
コートを羽織る必要すらないほど最近は暖かくなった.時季に暖かさは暑さに変わるだろう.
しかし、いくら暖かくなったとはいっても、海岸方面へ向かう列車の席は疎ら.
アレンたち以外には端にうたた寝する初老の男がいるだけだった.
長旅で窓の外を眺めることにすっかり飽きてしまったアレンは目の前に座る師を盗み見た.
そして、冒頭の台詞である.
本当に似合わない・・・.
団服はしょうがないとしても、不思議な仮面に紅の長髪は鬱陶しい.
アレンにしても長袖のシャツにベストを着込み気候にそぐわないと言えばそうなのだが、しかし、師の不似合いさにはもっと根本的な要因があるようなきがする.
「言いたいことがあるならはっきり言え.」
「いえ、なんでも・・・、」
ありません≠ニ続けようと思った言葉は、突然頬に触れた指の所為で言えなかった.
穏やかな丘をいく古い列車.
袖口からは師の煙草の匂い.
こんなどうしよもない些細な瞬間に動揺してしまう自分が居る.
それはまるでまだまだ子供だ≠ニ言われているようで息苦しくなる.
どんなに頑張っても届かない.背伸びするつま先さえも笑われているような歯痒さ.
劣等感にも似た感情の名前なんて、いっそ知らないほうがましだろうに.
「アレン」
この人はずるい.
揺れる心を見透かすように、その眼で、その声で名を呼ぶ.
いつものように馬鹿弟子≠ニ罵ってくれたら、悪態のひとつでも吐いて、触れる指を振り放せるのに.師はそれを許してくれない.
顔を背けることしか出来ない僕はなんて弱くて情けないのだろう.
「師匠にむかってなんだその態度は.」
「師匠が、師匠らしくしないからです.」 ほんの少しのぼせた頬に気づかないで.
「お前今すぐ降ろすぞ.」
「嫌です.」 ほんの少し見え隠れする本気に気づかないで.
「・・・」
「拾ったのは師匠なんですからね!拾ったからには責任とってください.僕はどこまでもついて行きますからっ.」 海の向こうまでだって・・・.
足りないところを数えたらキリがない.
埋められない時間を考えたら泣きたくなる.それでも、
師の旅に同行を許されたのはアレンだけなのだ.
「師匠なんて大嫌いです.」
間髪入れず、左の頬を容赦なく抓られた.
嫌いでいられたらどんなにシアワセだっただろう.
嫌いになれたらどんなにラクだろう.
どうしてこんなにも、
貴方の後を追いたくてたまらないのです・・・
初の師アレです
なんて書きにくいんだっっ(汗
ヨイチ、私に出来るのはここまでだよorz
07.05.29